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#実家じまい判断疲れモンダイとは?

親の家を残すか、売るか、解体するか。残せば維持費がかかり、解体にも費用がかかる。さらに、家の中に残された物をどうするのか。実家じまいは、家をどう終わらせるかを決め続ける「判断」の連続だ。

1.家の中の物量に翻弄される|親がしまいこんだ家財をどう処分するか
2.費用の目安がつきにくい|何度も経験しないからこそ問われる知識と判断
3.実務と感情の狭間で揺れる|決めなければ、実家じまいは前に進まない

全国で1000万戸目前とされる空き家は、国も放置できない問題として法整備が進む。その背景には、相続や所有者不明だけでなく、親の家をどう片付け、残し、売り、壊すのかという、実家じまいの問題がある。ニッポンモンダイが全国300人を対象にしたアンケートでは、約4割が実家じまいを「先送りした/先送りしたい」と回答。なぜか。空き家になる前段階で起きている、“判断疲れ”の実態を追った。

実家じまいに立ちはだかる、家の中に残る思い出たち

ニッポンモンダイで昨年11月に公開した『「#ゾンビ空き家」モンダイ。放置が生む負の連鎖』では、空家法(空家等対策の推進に関する特別措置法)が改正されても、行政代行執行が実効性に乏しい実情をレポートした。

所有者不明のまま家が朽ちていく「#ゾンビ空き家」だが、昨日今日で突然そうなるわけではない。屋内の家財を片付け、売るなら仲介業者を探し、更地にするならその費用負担など、残された伴侶や子など親族が対応をしなかった先にある。

いわゆる「実家じまい」である。これを先送りにした先に、ゾンビ空き家が生まれるのだが、なぜ、スムーズに進まないのか。

「実際に先送りにした」が13.7%、「先送りしたいと思った」が26%と、合わせて約4割が、何らかの理由により先送りに接触していた。次の質問で理由を探る。

最大の懸念点は、「家の中の大量の物を処分すること」の72.3%である。処分にまつわることでは他に、「思い出のある家や家財を手放すこと」36%もあり、これが強い負担となるのは間違いなさそうだ。

父親がひとりで住んでいた一軒家を片付け、更地にして売却した男性(61歳)は「男4人がかりで毎週末、3ヶ月かかりました。特に困ったのは大量に残っていたプリント写真です。父のきょうだいに話をしたら捨てていいということになり、処分しました」と語る。

実家じまいは、単なる家屋解体だけではなく、屋内に残る “人の想い”も同時に片付けなければいけない。おまけに、実家じまいを終えた・直近に控えている層の親世代は物を大切にしまい込む人も多く、物量に翻弄されるケースは多い。

「大量の来客用食器類、結婚式の引き出物の未使用の毛布やタオル類、押入れには客用布団が4~5組ありました。妹とふたりで片付けましたが、私たちも50代後半で若くはありません。重い物の上げ下ろしが大変。自分は体が動くうちに片付けて、子どもに迷惑をかけないようにしたいと心の底から思いました」(57歳・女性)

「以前からひとり娘の私を立ち入らせなかったことから、ゴミ屋敷化の覚悟はしていましたが、想像を遥かに超えて5LDK+納戸の各部屋には天井近くまで服や日用品、雑貨が積み上がっていました。押入れや箪笥にも大量の服や着物、父のスーツもあり……。物を捨てることを母が猛反対。折衷案として、ひと部屋ずつ母が捨てる/残すかを確認してから業者に廃棄依頼を繰り返したので、更地にするまで足かけ1年半かかりました」(53歳・女性)。

この女性のケースの場合は、母親の物への執着が強く、怒鳴られたり泣いたりされ、口論が絶えずストレスフルな攻防へ。また、出張買取では、査定途中から貴金属を確認される押し買いになり、「女性ひとりで対応する難しさもあった」という。

経験者のコメントからは、物理・金銭・感情・判断が一度に押し寄せてくる仕事だと透ける。残置物の処理や家屋の解体は業者に依頼できても、「何を残すか」「どこまで捨てるか」という判断までは任せられないのだ。

実家じまいを止めるのは物量ではない。“判断の孤立”だった

では、具体的にはなにが「先送り」につながっているのか。Q1の先送り層39.7%について、Q2の項目との関係をクロス集計した。

先送り接触率=「実際に先送りした」+「先送りしたいと思った」割合

意外なことに「家の中の大量の物を処分すること」は、42.9%にとどまる。実家じまいを“大変”にしている最大要因と、“先送り”に結びつく要因は、必ずしも同じではなかった。

注目すべきは、経済的な判断の「見積もり内容・追加料金の確認」の53.7%、知識の判断による「専門的な説明がわかりにくいこと」の53.3%だ。これは、「思い出のある家や家財を手放すこと」の58.3%に加えて、「この価格でいいのか」「この業者でいいのか」「この説明を信用していいのか」という判断を繰り返すことへの負担を示している。

では、多くの人が気にかける金銭面の負担の実情はどうなのか。

家屋の規模、解体まで含めるかなど前提条件が多様なため、10万円未満から数百万円までの振れ幅がある。他人のケースが自身に当てはまらないことも考えられ、施主は見積もりをするまで“正式な金額”が分からない可能性が高い。

前述の53歳女性は「残置物だけで、2.5tロングトラック19台分に及びました。ネットで調べて最低でも物の撤去に250万は必要と考えていましたが、想像以上だったのが家屋解体。地盤改良をした杭の撤去費もあり、頑丈に建てたゆえの後始末のリスクを感じましたね」と、嘆いた内訳は下記だ。

残置物処理で計209万円(エアコンや冷蔵庫など家電廃棄費用も含む)、解体費331万を合わせて計540万円。2025年の金額だが、産廃業者に聞くと「最近は処分費用が高くなり、人件費も高騰しているから残置物処理の金額は妥当」だった。

人生において、実家じまいは何度もする経験ではない。それだけに、「高い」と感じても、そもそも金額が妥当なのか比較が難しい中、自分で判断しなければならない。

実家じまいの判断を、誰に背負わせているのか

他界した親には聞けない、実家じまいを担う側が判断し進めなければいけない実情が浮き彫りになったが、その実務は誰が担っているのか。

「自分ときょうだい」の46.3%に続いて、「自分ひとり」が18%、「自分と配偶者」が16.3%で、自分がかかわって担う層は合計80.6%である。

千葉県を中心に営業する残置物撤去業者は、「依頼された方は、全て捨てて構わないと言われるので、作業に立ち会うことはありませんね」と語るが、「業者に任せた/任せる予定」はわずか2%である。

そんな実家じまいの負担は、担い手の人数により変化はあるのか。Q4で「自分ひとり」と「配偶者・きょうだい・親族と担った」層を抽出し、Q2とクロス集計をした。

いずれかの層で20%以上を掲載

複数でもひとりでも物量に対する負担は大差ないが、ひとりだと「費用が適切か判断する」、「見積もり・追加料金の確認」といった、金銭にかかわる負担がいずれも高い結果となった。複数であれば費用の妥当性や負担の分け方も相談できるが、ひとりなら自分が引き受けるしかない。専門知識が十分になくても、金額の妥当性を判断せざるを得えず、負担がより露出するということだ。

Q5は本調査前のスクリーニング調査だが、「親の家について考える必要はあるが、まだ具体的には動いていない」が最多で21.4%と、先送りの実情がより浮き彫りになっていた。実家じまいの“未着手層”ともいえる。

冒頭に記した通り、空き家は突然出現するものではない。実務と感情の狭間での判断が積み上がり、それが止まった先に放置がある。

多死社会の日本では、空き家は今後さらに増える可能性の方が高い。家財処分、業者選び、費用確認、売却・解体といった「判断の過程」を、個人の経験や家族構成だけに委ねず、公的に支える仕組みが必要ではないだろうか。

この記事の執筆者とインタビュアーの紹介

執筆者

Naviee

編集委員/デスク

編集、ライターほか。出版社勤務時代はコギャル全盛期のティーン誌で編集を担当し、その後フリーに。週刊誌、テレビ情報誌、アイドル誌などでインタビュー、ルポ、グルメ、健康記事を執筆。書籍では人気タレントのブログ本企画やベストセラー占い本の編集にも携わり、時代を映す企画に多数かかわる。日本ロマンチスト協会 研究員。