美白が骨を弱くする?「#日光レス」モンダイ
#日光レスモンダイとは?
美容のために日光を避けることを意識する人は少なくない。独自調査では、9割以上が意識的に日光を避けている一方、紫外線とビタミンDの関係を十分に理解している人は多いとはいえなかった。ビタミンDは紫外線によって体内でつくられ、カルシウムの吸収を助けるなど、骨の健康にも関わる栄養素だ。美白のための紫外線対策は大切だが、紫外線を避けることばかりに目を向けていると、別の健康上の問題を見落としてしまうかもしれない。美容と健康を両立するために、私たちは日光とどう付き合えばいいのだろうか。
1.9割以上が意識的に日光を避ける│紫外線対策の主な理由は8割が「美容のため」
2.知っていても日光は避ける│ビタミンDとの関係を「よく知る」人も94.6%が日光を避けている
3.骨の健康は何十年先まで続く│若い時期の骨量から高齢期の健康寿命まで
「日焼けしたくない」「シミやシワを防ぎたい」。美容を意識する人にとって、紫外線対策はもはや夏だけの特別なケアではない。日焼け止めを塗り、日傘を差し、長袖を着る。できるだけ日光に当たらないよう心がけている人も少なくないだろう。しかし、紫外線を避けることが、思わぬ健康問題につながる可能性があることをご存じだろうか。
紫外線対策をする理由、8割が「美容のため」
紫外線対策に関するニッポンモンダイの独自調査によれば、「紫外線対策を行う主な理由は何ですか?」という質問に対し、80%が「シミ・シワなど美容のため」と回答。

さらに、「健康や美容のために、日光に当たることを意識的に避けていますか?」という質問では、「かなり避けている」が42.3%、「やや避けている」が49.7%。実に9割以上が、程度の差こそあれ、意識的に日光を避けているという結果になった。

肌を守るための紫外線対策が広く定着している一方で、私たちは「日光を避けることによる悪影響」まで意識できているだろうか。
そのひとつとして知っておきたいのが、ビタミンD不足だ。
ビタミンDは、日光からつくることができる
ビタミンDは、カルシウムの吸収を助け、骨の健康を保つために重要な栄養素だ。
そして、ビタミンDは、他の多くの栄養素とは異なる性質を持つ。食事から摂取するだけでなく、皮膚に紫外線、特にUV-Bが当たることで、人間は自らの体内でビタミンDをつくることができるのだ。
つまり、肌にとっては避けたい紫外線が、ビタミンDの生成には必要になる。ここに、美容と健康の「ねじれ」が存在する。
今回の調査では、「紫外線対策がビタミンDの生成を阻害する可能性があることを知っていますか?」という質問に対し、「なんとなく知っている」が最多の45%で、「よく知っている」は25%。残りの約3割は「あまり知らない」「全く知らない」という回答だった。

紫外線を避ける意識は高い一方、紫外線とビタミンDの関係については十分に理解されているとはいえない。では、知識があれば日光を避ける行動は変わるのだろうか。Q2とQ3をクロス集計した。

クロス集計では、紫外線対策とビタミンD生成の関係を「よく知っている」と回答した人でも、57.3%が日光を「かなり避けている」、37.3%が「やや避けている」と回答した。合わせると94.6%となり、知識があるほど日光を避けなくなる、という単純な関係ではないことがうかがえる。
もちろん、ビタミンDは食事からも摂取可能だ。代表的なのは、鮭やサバ、イワシなどの魚類。そして、きのこ類にも含まれている。ただし、含有量の多い食品は限られているため、食事からの摂取だけでなく、日光による体内での生成も含めて考える必要がある。
ところが、現代の生活では屋内で過ごす時間が長くなり、さらに日焼け止めや、肌を覆う衣服などによって紫外線をバリアする習慣が定着している。「紫外線を避ける」という美容の習慣が、ビタミンDをつくる機会を減らしてしまう可能性があるのだ。
実際、日本人を対象とした研究でも、ビタミンD不足は珍しくない。北海道と熊本の健康な成人107人を対象に、夏と冬の2回、血中ビタミンD濃度と食事からのビタミンD摂取量、さらに専用の測定器を使い紫外線を浴びた時間を調べた研究がある。その結果、血中ビタミンDが不足または欠乏していた人は、夏でも47.7%、冬には82.2%に達した。
食事からのビタミンD摂取量は夏・冬ともに血中濃度と関連し、紫外線を浴びた時間も夏には関連がみられた。研究では、職業や生活習慣の違いを考慮する必要はあるものの、日本人の多くは、食事からのビタミンD摂取と紫外線曝露の双方を増やす必要があることが示されている
ビタミンD不足と骨粗鬆症
骨を丈夫に保つためにはカルシウムが欠かせない。そしてビタミンDには、腸からのカルシウム吸収を助ける働きがある。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」でも、ビタミンDは日照によって皮膚でつくられることを踏まえ、日常生活の中で可能な範囲で適度な日光浴を心がけることが重要とされている。
2022年に発表された研究では、日本の40歳以上における腰椎または大腿骨頸部の骨粗鬆症有病者数は、男性約410万人、女性約1,180万人、計約1,590万人と推定されている。
また、骨の健康は、年齢を重ねてから考えればいいものではない。女性の場合、骨量は20歳代までに最大となり、その後も妊娠・授乳、閉経など、ライフステージに応じて骨代謝が変化する。若い時期に十分な骨量を獲得し、中年以降の生活でいかに減少を抑えていくかが、将来の骨の健康を考えるうえで重要なのだ。
紫外線から肌を守ることは、短期的な美容の上でプラスになる。一方で、骨の健康は何十年も先まで見据えて考えるべき問題だ。
もちろん、骨のために日焼け対策をやめるべきかというと、そう単純な話ではない。
紫外線の浴びすぎは、皮膚へのダメージなどにつながるため、適切な紫外線対策は重要だ。大切なのは、「紫外線を完全に避ける」ことと、紫外線による健康上のメリットとリスクを知ったうえで付き合うことは異なる、という点だ。
日照時間や季節、住んでいる地域、肌の色や生活習慣などによって必要な日光曝露量も変わるため、「何分浴びれば必ず十分」という一律の基準を設けることも難しい。
美白と健康、どちらもあきらめないために
骨粗鬆症は、骨折して初めて気づくこともある「沈黙の病気」だ。だからこそ、将来のために若いうちから骨を意識することが大切になる。弱くなってからではなく、できるだけ早い段階から守っていきたい。
一方で、「シミを増やしたくない」「きれいな肌を維持したい」という気持ちは、多くの人にとって自然なものだろう。しかし、美白を意識するあまり紫外線を徹底して避けることは、骨の健康に影響を及ぼす可能性がある。
食事からビタミンDを摂ることを意識するのはもちろん、顔など紫外線が気になる部分はしっかり対策しつつ、適度に日光を浴びる時間をつくるという方法もある。
「肌のために紫外線は避けたい」という美意識と、「骨の健康のために日光を適度に浴びるべき」という必要性。”美容の常識”と”健康問題”との間で、私たちはどうバランスを取ればいいのだろうか。「紫外線は敵」という美容の常識を少しだけ見直してみることが、何十年後の自分の骨と身体を守るきっかけになるかもしれない。
美白を優先するあまり、何十年後の骨の健康を犠牲にしていないか。「日光レス」がもたらす、もうひとつの問題を考えてみたい。