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#移住者と地元民のギャップモンダイとは?

地方移住を希望する人が増え続けている。移住者の思いや希望、移住失敗者の愚痴や反省の弁などはSNSでよく吐露されているが、受け入れ側住民の声はあまり聞こえてこない。そこで受け入れ側の思いをアンケート調査した。

1.過去には大きな移住トラブルも|SNSに次々書き込まれる失敗談
2.アンケートから見えた受け入れ側の本心|「郷に入っては〜」がデフォ?
3.秋田に移住し成功している芸人が語る秘訣|“ホーム”となる場所に感謝を

コロナ禍後も都会から地方への移住を希望する人の数が年々増加傾向にあるのをご存知だろうか。一方で、移住した人と元々その地域にいた人とのトラブルが発生することもあり、過去には大きな“炎上騒動”も巻き起こった。移住する時には何に気をつければいいのか。東京・浅草から秋田県大仙市に店を移して成功しているものまねタレントのHEY!たくちゃんの体験談も聞きながら「移住の意識ギャップモンダイ」を考える。

公益社団法人 ふるさと回帰・移住交流推進機構によれば、2025年の移住相談件数(面談・電話・メール・見学・セミナー参加)は、73,003件。2024年(61,720件)に対し18.3%増となり、5年続けて過去最高となったという。

年々増え続ける地方移住希望者

2020年のコロナ禍をきっかけに在宅勤務が広まり、都会に居住する意味がないと考えて地方に引っ越す人が増えた。そして今、コロナ禍は過去の話になり出社に回帰する企業も増えているが、都会から地方に移ろうという流れはそのまま続き、希望者の数は増え続けている。

しかし、そこで気になるのが移住者と元々の住民とのトラブルだ。過去にはいち地方の問題にとどまらず、全国的なニュースになった“移住トラブル”も起きた。2023年、高知県土佐市の観光交流施設で起きた「カフェ退去騒動」だ。

詳細は検索していただくとして、当時報じられた情報をまとめると、観光交流施設の指定管理者であった地元NPOの理事長が、施設が私物であるかのように振る舞い、東京からの移住者が経営する施設内のカフェに「なぜよそ者がでかい顔で施設を使っているのか」などと言いながら強引な要求を続けた。カフェ経営者は要求を拒んだが、市は暴走する地元NPO理事長を止めきれなかった。カフェ側が事態をSNSに投稿すると、1億超のビュー数を記録し、炎上。全国的なニュースになった。

その後、カフェは閉店・退去して高知市内で新たに店を開き、退店を迫った理事長のNPO法人は指定管理者から外れた。店を利用していた客も含め、誰も得しない結果に終わった。

もちろん、多くの移住者は大きな問題もなく、地域に溶け込んで過ごしている。しかしSNSには、移住に失敗したという人の告白ポストが次々に現れる。移住先に関する下調べや、心構えが足りないケースも散見される。

移住者を受け入れる側へのアンケート調査から見えたホンネ

移住する側の思いはよく目にする。では移住者を受け入れる側はどのように考えているのか。「人口百万人以上の都市圏から、転勤・進学以外の理由で移住してきた人」が周囲にいるという男女50人にアンケート調査した。

「地域に新しい人が増えるのは嬉しい」(38%)「地域が活性化するのではないかと期待した」(12%)とポジティブに捉えた人が半数の25人。「特に何も感じなかった」人が10人と、大半の人は都会からの移住をネガティブに捉えていない。

ネガティブ系の反応も「地元の文化や習慣になじめるか気になった」(6人)、「地域の人とうまく付き合えるか気になった」(8人)と“懸念”レベルだ。

明らかに拒否感を示す「都会の価値観を持ち込まれることに抵抗があった」は、わずかひとりだった。

実際に交流が始まってからの感想を聞いたQ2に対しては、「近所付き合いの距離感」を選んだ20人(40%)を筆頭に、摩擦に関する項目にチェックを入れる人が多く、「特に違いを感じたことはない」は11人だった。

Q1で「地域に新しい人が増えるのはうれしい」と回答した“歓迎派”の19人のQ2での回答を見ると、「地域の行事や自治会への参加」8人、「近所付き合いの距離感」8人、「挨拶や日常的なコミュニケーション」8人、「地元の人や地域についての発言・態度」6人と、実際に住み始めるとズレを感じている人が多く、「特に違いを感じたことはない」は3人だった。

Q1で「地域が活性化するのではないかと期待した」と回答した同じく“歓迎派”の6人を見ると、「近所付き合いの距離感」と「挨拶や日常的なコミュニケーション」にズレを感じる人が共に4人。「特に違いを感じたことはない」は、ひとりだった。

Q1で「都会の価値観を持ち込まれることに抵抗があった」を選んだネガティブ派のひとりは、「特に違いを感じたことはない」を選んでいた。

Q1で「特に何も感じなかった」とした10人のうち、6人はQ2で「特に違いを感じたことはない」を選んでいるが、「地域の行事や自治会への参加」3人、「近所付き合いの距離感」2人、「地元の文化・慣習への理解」2人と、ズレが気になった人もいた。

一方、移住者に求めるものを聞いたQ3では、「地域のルールや習慣を尊重する人」と回答した人が26人(52%)と最も多く、「地元の人と日常的にコミュニケーションを取る人」21人、「地域のために自分のできることをする人」16人、「地域の行事や活動に参加する人」15人と続く。

逆に「移住者だからと特別なことをする必要はない」(13人)「地元に過度に合わせず、自分らしく暮らしている人」(9人)と、“迎合する必要なし”とする人もいたが、全体から見るとマイナー派。

基本的には“地域のために”を求める人が大半であり、やはり「郷に入っては郷に従え」が受け入れ側の多くの人の気持ちなのだ。

秋田に移住しラーメン店経営を成功させている芸人・HEY!たくちゃんに心構えを聞く

では移住時の“摩擦”を減らすために、移住希望者は具体的にどのような心構えが必要なのか。

東京・浅草で経営していた行列ラーメン店『鬼そば藤谷』を2025年4月に秋田・大仙市に移し、自らも移住したものまね芸人・料理人のHEY!たくちゃんに話を聞いた。たくちゃんの店は秋田でも行列店になり、移転して1年半を迎えている。

イラストにアゴを突き出す“アゴまね”のモノマネタレントとして、00年代にテレビを中心に活躍。ラーメン店主志望者を発掘・独立出店を
応援するプロジェクト『東京ラーメンショー2011』で優勝した後、2012年に渋谷に自身の店を初出店した

たくちゃんの店はオープン当初から盛況だったが、一方で食べに来た地元客からの“洗礼”も受けていたという。

「開店した頃からずっと、何人もの人に『今はお客さん来てても、すぐ終わるよ』と言われてました。半年経っても『まだボーナスタイム』って」

店まで食べに来た客から、なぜか“長持ちしない”と言う趣旨の言葉を何度も投げられたという。気弱な人なら「移住者へのイジメ」とネガティブにとらえ、精神的ダメージを受けていたかもしれない。しかしたくちゃんは「ただね、そう言いながら店にはちゃんと来てくれるんですよ」と、客の様子を見ながらうまく受け流していた。

こうした発言は、その地の“気質”、または過去に潰れた店を多く見た経験からの言葉なのだろう。その土地で積み重ねられた歴史から生まれた言葉であり、悪気があるとは限らない。たくちゃんはそこを冷静に見極めることができた。

たくちゃんの店は雪が多い冬を乗り越え、開店から1年が経っても客足は落ちなかった。その頃には揶揄するような声も無くなり、すっかり地元の店として定着した。

定着できたのは、もちろんラーメンの味が良かったのが大きな理由だ。それだけではなく、たくちゃんは日ごろから地域に受け入れられるためにある姿勢を貫いていたという。

「僕はずっと、“居させて頂いている”という思いを忘れないようにしてるんです。元々たくさんの人が住んでいる場所に、“よそ者”が後から来たわけですから。そういう緊張感のようなものはずっと持っています。1年たった頃、慣れみたいなのが自分の中に出てきたことがあって、これは良くないな、と引き締めました」

また秋田に移住後、ある芸人仲間の言葉を思い出し、噛み締めたこともあったという。

「ハマカーンの浜谷健司さんが、芸人3人で同居する秘訣として語ってた言葉があるんです。例えば他の同居人が洗濯物とか置きっぱなしにしてイラッとすることがあるじゃないですか。そんな時は『自分が都会の家賃15万円の家に住めるのは、この人がいてくださっているからだ』と考えて気持ちを收める。こういう考え方はストレスも溜まりますが、自分ひとりの力ではなく、誰かのおかげで今の状況を作り出せている、と考えるのは大切だと思うんです」

ポンとやって来た“よそ者”がその地で暮らしていけるのは、そこにずっと居る人たちが築いてきた環境、インフラなどがあるからだ。

一方でたくちゃんはこうも言う。

「よそ者として来たけど、住み始めたらその地域の住民なんです。住民として、自分はその市、町、村にどんな貢献ができるか、ということも考えなければいけないんです」

たくちゃんは店と家がある秋田県大仙市を“ホーム”と考え、雪が多い冬場に東京や福岡で出張出店した際も「秋田の人により美味しく食べてもらうために、何を持って帰れるか」を考えていたと言う。

移住する人にはこんなアドバイスを送る。

「地方移住をする時には、まず“ホーム”となる場所の人たちに感謝しつつ、その土地の土を触って頑張っていくという姿勢を見せて、愛を持って、納得してもらって一緒に進む。時には支え合っていくところがないとうまくいかないと思います」

この記事の執筆者とインタビュアーの紹介

執筆者

華川富士也

編集委員

ライター、構成作家、フォトグラファー。記録屋。長く勤めた新聞社を退社し1年間子育てに専念。現在はフリーで活動。洋楽、邦楽、建築、旅、町ネタ、昭和ネタなどを得意とする。過去にはシリーズ累計200万部以上売れた大ヒット書籍に立ち上げから関わりライターも務めた。